映画をまだ観ていない方は、映画の結末まであらすじが掲載されているのでご注意ください。鑑賞後に読んでいただけたら嬉しいです。いつもありがとうございます。

LGBT映画『God’s Own Country (2017) 』を鑑賞してまいりました。
『田舎 ✕ ゲイ 』 の方には共感。
Contents
簡単なあらすじ
美しい田舎に暮らす夢も希望も無い青年に一筋の光が。
概要
サンダンス映画祭で大絶賛、その後、世界各地で上映され人々の心に刻みこむ冷たくも暖かい映画。
いやいや家業を継ぐことになった主人公のストレスのはけ口は飲んだくれて、見ず知らずの男とセックスをすること。
田舎で逃げ場もない孤独。
そんな時に現れた一筋の光。
フランシス・リー監督の出身地がヨークシャーであり、撮影もヨークシャーで行われるなど、監督の実体験がもとになっているそう。
監督はドラマスクールに通いたいため早く田舎から抜け出したかったなど。
↑どことなくユアン・マクレガーに似ている監督。
出演者

↑左:主人公ジョニー、右:ジョージ
ネタバレ
1,夢も希望もない主人公ジョニー
舞台は美しいイギリスの北部ヨークシャー。
ゲロゲロゲロ
冒頭
早朝の真っ暗なシーンから、主人公ジョニーはトイレで嘔吐。
ジョニーの日課は家業である牧場(田舎街から更に離れたど田舎)を切り盛りし、
仕事が終わると街に繰り出しては、浴びるほど酒を飲み、そのままバーで出会った男と行きずりのセックスをする日々。
セックスも単なる性処理道具にしか思っていない主人公ジョニーは、やったら即、帰路につくという男。
主人公ジョニーの心は完全に閉じています。
いつものように二日酔いのまま仕事へ。
主人公ジョニーは、厳格な父、そして祖母と共に牧場を切り盛りしています。
母親は数年前にロンドンに出稼ぎに行ったきり帰ってきていません。
主人公ジョニー『ただいま・・・』
祖母『父のところにすぐに行きなさい』
主人公は父のもとへ。
父『子山羊が死んでいる。お前のせいだ。どうして面倒を見なかったんだ。』
父は脳卒中で倒れた後、身体が思うように動かなくなり、牧場の仕事は全て主人公ジョニーがやらねばならない状況。
父も祖母もジョニーが酒浸りなのを知っており、やる気の無さ&技術不足のため牧場を継がせるのは難しいと思っています。
主人公ジョニー『こんなクソ田舎で、こんな退屈で毎日同じことの繰り返しのクソみたいな仕事したくねーよ』
そんな言葉を吐き捨て、常にふてくされている主人公ジョニー。
主人公ジョニーの旧友は、田舎暮らしに飽き飽きし、都会の大学へ進学。
そこでシャイニーな生活をおくる友人と、退屈な生活を送る自分に苛立つ日々。
全て酒と行きずりのセックスで解消していますが、心は全く満たされていません。
2,ジョージ現る
羊の分娩の時期。
主人公ジョニーには任せられないと判断した父は、期間限定で人を雇うことに。
主人公ジョニーは期間雇用者のジョージを駅まで迎えに行くことに。
ジョニーはルーマニアからやってきたハンサムな出稼ぎ労働者。
主人公ジョニー『どこから来たんだ』
ジョージ『ルーマニアからだ』
主人公ジョニー『ジプシーか?』
ジョージ『そういう呼び方は止めてくれ。』
主人公ジョニーは、ルーマニアからやってきた出稼ぎ労働者ジョージを見下しています。
一方で、ジョージは物静かですが、英語を流暢に話し、農牧の知識も豊富であり、更に羊乳でチーズを作る事を
薦めるなど、その頼れる感から主人公ジョニーの父と祖母には迎え入れられます。
主人公ジョニーは相変わらず無愛想でアンフレンドリーです。
翌朝、
主人公ジョニーとジョージは牧場の仕事をします。
羊の出産も難なくこなすジョージ。
ジョージの手際の良さに驚く、冒頭で羊を殺してしまった主人公ジョニー。


3,二人きりの牧場
二人は羊の柵を作るために、家から離れたコテージで二人だけで数日間、仕事をすることに。
黙々と仕事を行う二人。
そんな時、
極寒の土地で、体温を奪われて死にそうな子山羊が。
主人公ジョニー『もう手遅れだ。』
ジョージは子山羊のお腹を優しくさすり、子山羊は再び元気になります。
そんな優しい心の持ち主のハンサムなジョージを見つめる主人公ジョニー。
↑優しいジョージ。ふてくされている主人公ジョニー。
天の邪鬼の主人公ジョニーは一言。
主人公ジョニー『このジプシーが!!』
物静かなジョージがいきなり激昂し、主人公ジョニーに飛びかかります。
ジョージ『次にその言葉をいったら、お前をファックしてやるからな』
主人公ジョニーは驚いて言葉が出ません。
↑一応、喧嘩しているシーン。
翌朝、
ジョニーが夜小便をしていると、突然現れた主人公ジョニー。
二人は抱き合い(!?)、そのまま荒々しく獣のようにセックス。
翌晩、
二人は、前夜と一転、優しいセックス。その後、ピロートークへ。
ジョージ『こんな美しい土地に住めて幸運だな。僕の国も美しい。でも僕は祖国を出て働かないといけないんだ。だから国では親がみんな泣いているよ。子どもたちやはみんな、外国に働きにいかなきゃいけないからさ。』
↑なんとなく、二人は出会ったころからずっと気になっていたんだと思う。
4,父との絆。ジョニー帰国。
ジョージとラブラブな主人公ジョニーは笑顔になることも多くなります。
祖母は使用済みのコンドームを発見し、一瞬表情が変わるも、見なかったことに。
ある時、父の様態が悪化。そのまま病院へ。
とうとう父は歩けなくなり車椅子生活に。
お風呂や下の世話まで祖母、そして主人公ジョニーが。
あんなに仲の悪かった父を優しく介抱するジョニー。
主人公ジョニーは、まるでジョージの優しさに感化されたかのよう。
父『あり・・・ありがとう・・・・』
思うように口が動かず、ひねり出すようにお礼を言う父。
主人公ジョニーは笑顔に。
初めて二人は和解したように思えました。
↑つんでれだけど、自分の身体の不自由さにもがく父。
一方で、
ラブラブな主人公ジョニーとジョニーにも転機が。
分娩シーズンが終わり、ジョージは今後をどうするか迷います。
主人公ジョニー『お願いだ、一緒にヨークシャーに、この牧場に残ってくれ』
ジョージ『分からない・・・』
主人公ジョニーは、ジョージの曖昧な回答にショックを受け、再び酒浸り&一夜限りのインスタントセックス生活へ。
そんな浮気現場を発見したジョニーは怒りのあまり、牧場を出ていき、主人公ジョニーの目の前から姿を消します。
心にぽかんと穴が開いた主人公ジョニー。
ジョージが置き忘れていったセーターを抱きしめ、匂いを嗅ぐ主人公ジョニー。
↑ジョージ『実家に帰ります。』
5,主人公ジョニーの決断
主人公ジョニーは父、祖母を説得し、ジョージを探す旅へ。
ジョージは期間工として別の場所で働いていました。
ジョージは未だに怒っています。
主人公ジョニー『ごめん。戻っきてほしい。君が必要なんだ。』
言葉ベタな主人公ジョニーは自分の想いを初めて伝えます。
二人は抱きしめ、キス。
そして二人仲良く、ヨークシャーの牧場へ帰りました。

終わり
感想
・田舎 ✕ ゲイ
LGBT映画もメインストリームは都会でドラッグやクラブなどのカミングアウト系。
トム・フォードのような洗練された衣装も無ければ、ワインやAIDSやグラインダーも出てきません。
自分の性癖で悩むこともなければ、周囲にキチガイも存在しません。
この映画にあるのは広大な大自然の中にひとりぽつんと佇む青年。
その中で一人、世界が小さいと不満を抱く主人公
終身刑のような感覚、クラスメートの友達は大学に進学し洗練され、エンジョイしている
現実逃避の手段は行きずりのセックスに酒。
やりたくても自分の身体の不自由さには敵わない自然の摂理。
本作はLGBT映画の中でも少数派の映画なのだと感じました。
この映画は主人公がゲイであろうがストレートであろうが関係ないような気がするのです。
そして本作ではホモフォビックなクソ男も、旦那のセクシャリティに悩む妻も出てこない。。
田舎で変えたいけれど変えられないわかりきった退屈な未来に悩む孤独な自分。
そんな誰にでも(田舎出身の人)経験のある物語。
・ジョージは神様
God’s own country ”神が所有する国”
ジョニーが来てから、動物たちが元気になった。命を生き返らせることもある。何よりもジョニーの生活にも息吹を与えた。神はジョージだったのではないか。
また、主人公ジョニーは農場を継ぐことに。
結局、神が主人公ジョニーをを引き止めるためにジョニーを贈ったのではないか。
最初のシーンは真っ暗な暗闇の中、主人公ジョージが嘔吐しているシーン。
後半は光に満ちた光景の数々。
猫背100%の主人公ジョニーの姿勢も、ジョージとの出会いから、姿勢がだんだんとよくなってくる。
そして嫌いだったヨークシャー。次第に神々しい美しさに気づいていく。
これは、たった一人の人間が変えてくれた神業。

早く田舎から飛び出したい、そんな想いで満たされていたのを今でも覚えています。
念願の夢が叶い、大学進学時に故郷を去ることに。
あの日は今でも覚えています。
映画では対比となっている二人。
主人公ジョニーは美しいヨークシャーの風景を捨てたい身分。
ジョージはルーマニアという美しい土地を捨てないといけない身分。
気持ちわかる。
ただ、不思議なのは、毛嫌いしているはず故郷をふとした時に思い出すのです。
故郷の美しさや匂いや空気。
やっぱり好きなんだな。
結局、宝物は故郷にあった。
そんな「アルケミスト」の結末をも思い出す。
自分の帰る場所はあのど田舎なのかもしれない、と思いました。
最後に、
この映画は思い出の映画。
バンコクに来てから週に1階以上は通った映画館”Lido Cinema”で鑑賞した最後の映画。
Lido Cinemaは2018年5月31日を最期に長い歴史に幕が閉じました。
家から近かったので、思いっ立ったら駆けつけて映画を鑑賞していました。
デートをしたり、友達と観に行ったり、偶然、隣に座った人とお友達になったり、
そんなたくさんの思い出が詰まった映画館。
閉館の知らせを聞いた時は本当にショックだった。
映画館を観終わった後はお礼をして、別れをつげました。
ありがとうございます、Lido Cinema。.