タイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち(Bad Genius)』ネタバレ&内容 カンニングで荒稼ぎ。天才少女が学校中の生徒のカンニングを手助け。タイの社会問題や格差問題を扱った傑作。








映画をまだ観ていない方は、映画の結末まであらすじが掲載されているのでご注意ください。鑑賞後に読んでいただけたら嬉しいです。いつもありがとうございます。

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち(Bad Genius)』を鑑賞して参りました。
★★★★★オスカー・外国語映画賞はこれで決まり。

たくさん映画を観ていると『衝撃』を感じる映画に出会うのですが本作もその一つ。

簡単なあらすじ

天才高校生のリン。学校では勿論トップの成績で奨学金をもらっている。
そんなリンは、勉強ができない友人をカンニングという手段で救ったことが噂となり、お金と引き換えに学校中の生徒にカンニングの手助けをしていくようになる。

概要

『GDH』はタイの映画会社です。昨年、タイの映画会社の中で内部分裂があり『GDH』として再出発。
昨年から本作を含めて三作の映画が制作されてですが、すべてホームラン級に素晴らしい。
3作目の本作。
正直、こんな映画観たことないです。

舞台は高校。
テーマは『カンニング』。
カンニングは人類にとって普遍のテーマ。
学校生活を送っていれば、一度や二度、周囲でカンニング疑惑が出てくるもの。
中には、カンニングがバレて停学・中退など制裁を受けた人々も中にはいるかと思います。

ダークサイドに落ちる天才、そしてそれに群がる凡才(もしくはそれ以下。)
みんながみんな『BAD』なのですが、一番の『BAD』は誰なのでしょう。

『カンニングはばれなければやってもいい』

そんな精神性をタイ人(少なくとも映画の中からは)から感じたのですが、どうなのでしょう。

カンニングを肯定も否定もしない内容の映画ですが、きちっと痛い目に遭います。
それでも、一番痛い目に遭う人を見ると、タイの社会的格差を感じてしまいます。
結局大事なのは『〇〇』なのね!って。

『袖の下』
『裏口入学』
『寄付金』
『格差社会』

タイでも年に数回、カンニング事件のニュースが報道されます。
そんな、カンニングという社会問題に切り込んだだけではなく、タイにおける格差社会なども絡めた本作は、わたしの心に強く訴えかけるものがありました。

ネタバレ

リンは天才少女。
教師を父に持つリンは、母を早くに亡くし、父と二人暮らし。
どちらかというと貧しい家庭。
父は娘を愛しており、娘の将来のことを考えて、『海外に留学させてくれる』高校へと入学させます。学費の高い学校への入学を躊躇するリン。
リンは家の経済状況を知っているので尚更です。
それでも、リンの頭脳に感銘を受けた校長先生。

校長『是非、わが校に入学してください。』

リン『わかりません。授業料、交通費、食費、その他もろもろの費用を考えると』

校長『全額無料でOKです。それにお昼も支給します。』

入学したリン。
当然のようにトップの成績を独走。
そのリンの頭脳を頼ってきた友人・グレースに勉強を教えてあげるようになります。
グレースは数学のプリントを持っています。

リン『そんなの簡単よ』

あるとき、
数学のテストがあります。
リンはびっくり。

『グレースに教えていたプリントと同じ問題!!どうしてグレースはプリントを持っていたのだろう。』

後ろの席に座っているグレースを見るリン。
グレースは困っていて涙を流しています。

リン『あなたに教えた問題じゃない!!できるでしょ』

グレース『覚えてないわよ。そんなの』

見かねたリンは、回答を書いた消しゴムをグレースに渡します。

リンは当然の如く満点、そしてグレースもカンニングのおかげで好成績を修めます。

その噂を聞いたのはグレースのお金持ちの彼氏(以下、カネ男)

カネ男『一科目につきお金を払うから、力を貸して。仲間は五人いる。』

最初は躊躇するリン。
しかし、貧しい父の生活を見て決心。

リン『やるわ』

さてどうやって先生にばれずに解答を伝えるか。
リンはピアノが得意。
そこで、ピアノの演奏で解答を伝えることに。

この曲の手の動きなら『A』、この曲の手の動きなら『B』、、、、

リンの作戦は功を奏し、上手に解答を伝えることに成功します。
その噂は噂を呼び、学校の多くの生徒がリンにお金を払ってカンニングを頼るようになります。

しかし、長くは続きませんでした。
リンのクライアントの一人の生徒が、リンのピアノの手の動きを覚えられずに困っていました。
彼は切羽詰まり、学年2位の男子・バンクにお願いします。

『バンク、助けてくれよ。俺はピアノの動きが覚えられないんだ。お金払うからさ。』

バンク『ピアノの動きってなんだよ。お金なんていらねーよ。』

リンのカンニングビジネスを知らないバンクは不審に思います。
いつものようにテストが開始。
バンクはいつものようにテストを受けつつ、周囲を見渡すとリンを見つめる男。
カンニングしていると勘違いしたバンクは教員にチクります。(実際にカンニングしているんだけれど。)

リンのカンニングは校長にバレ、リンの海外留学の話もチャラ。
愛する父にもがっかりされ、リンは涙を流して後悔します。

バンクはリンの代わりに海外への奨学金のチャンスを手に入れます。
1年後。
グレースにお願いされます。

グレース『お願い。SATで高得点を取らなければならないの。カネ男とアメリカの大学に行きたいの。お金はたっぷり払うわ』

リン『無理よ。SATは何時間もある試験でしょ。それに、、、』

そう思うリン。ふと時計を見つめると、世界には時差があることに気づくリン。懲りてないリン。

リン『オーストラリアとタイでは3時間の時差がある。わたしがオーストラリアで試験を受けて、その回答を送れば間に合うわ。回答は鉛筆に印刷すれば試験の時に使えるわ。』

一同大喜び。

リン『でも、一人で全ての回答は覚えられない。もう一人必要。バンクよ』

バンクは貧しい家庭。
母はランドリーを経営しているものの、洗濯機が壊れて手洗い。
バンクも母の手伝いをしつつ、隙間時間を使って勉強しています。

あるとき、バンクは母親の仕事のお手伝いをしている最中にギャングにいちゃもんをつけられ、ボコボコにされます。
翌朝、目が覚めるとバンクは街から遠く離れたゴミ捨て場に捨てられていました。
その日はバンクの海外留学への奨学金の選考会の日。
バンクは勿論出席できず、留学の話は無くなります。

そんな絶望の中、リンがやってきます。

リン『わたしと手を組まない?報酬は1ミリオンバーツ。すべてはあなた次第よ。わたしたちはどう頑張ったってカネ男みたいなリッチな生活は送れないの。生まれた時点で決まっているの。だったら、このチャンスに賭けてみない?』

海外留学のチャンスも消え、貧乏な自分の家を見たバンク。
お金のためにカンニングに加担することに。

しかし、計画のさなか、
バンクは知ってしまいます。
ギャングを雇ったのはカネ男。
自分を計画に巻き込むために、奨学金の選考会のチャンスをぶち壊した張本人。
カネがあれば何でもできる。

バンクは激昂。
一度は計画を放棄。それうぃ知らなかったリンもショックを受け、計画を放棄します。
リンは帰り道、バンクに遭遇します。

バンク『殴られてめちゃくちゃにされたままじゃ、何の得もしていない。この際、お金はもらわないと。それに、リンが巻き込んだんだから責任とってもらう。』

心変わりしたバンク。そしてリン。

2人はオーストラリアへ。
試験会場のトイレには携帯を準備。

試験開始。
あらかじめ二人で分担しておいた問題を解く二人。
そして、リンとバンクから回答が送られてくるのをタイで待つグレースとカネ男。
一回目は上手くいった。

しかし、二回目のテスト休憩でバンクは試験官につかまります。

『なんでトイレに長く入っているんだ。出てこい。』

バンク不在の中、リンは一人で試験に臨みます。
バンクの回答も覚える必要が出てきたリン。
ピアノのけん盤になぞらえて、無事全て暗記、タイのグレース・カネ男に送信。
任務完了。

一方で、
バンクは尋問を受けています。
そんな姿を見たリン。

バンク『俺は大丈夫だから。』

そうアイコンタクトをした二人。
リンは一人タイへ帰国。
リンの表情は晴れません。
そしてカンニングビジネスから手を引くことに。

グレース・カネ男は無事にSATで高得点を取得。
浮かれモードな二人。

リン『海外の大学はね。マークシートじゃないの。自分の力で乗り越えなきゃいけないのよ。入ってからが大変なの、気づかない?』

リンはタイの大学で父のような教師になるべく、教育学部を受験。

『あなたは先生として生徒に模範的な存在となれますか?』

リン『わたしは悪いことをいっぱいしてきました。でも、これからはその経験を忘れずに模範を示せるような存在になりたい。』

面接後、バンクからメールが。

バンク『今日の夜、うちに来てくれないか。』

リンはバンクの家へ。
バンクはオーストラリアでのカンニングがバレ、学校を退学になっていました。

バンク『俺と手を組んでカンニングしないか。もっと儲かるよ。』

完全にダークサイドに落ちています。

リン『もうお金はどうでもいいの。』

バンク『お前に否定する権利はない。それに、カンニングしたって刑務所にいくことは絶対にないんだぜ。それに、こんなにしたのはお前だ。もし協力しないのなら全てバラス。そうしたら、グレースもカネ男も、そして君のお父さんも悲しむだろうな。君次第だよ。』

リン『好きにすれば良いわ。そうすれば平等よね。でもね、すべてはわたし次第よ。』

場面は変わり、
リンはインタビューを受けています。

『カンニングをしたことを告白してくれるんですよね。それでは話を始めてもいいですか。』

リンは自分が行った全ての事を、罪を告白することにしました。
終わり。

タイのカンニング事情

毎年、試験シーズンになると必ずと言ってよいほど報道されるカンニング事件。カンニングも年々、緻密になっていくため、学校側も色々な対策をしているそう。

カンニングに関してこんなニュースがありました。

4人の医学生がカンニング。手順は次の通り。1、カメラを搭載したハイテクメガネを着用し、テストの問題を撮影。2、問題を解く係の人が問題を解く。3、回答をクライアントに送る。4、ハイテクな時計に送られてきた回答の通りに答案用紙に記入。ちなみに再試が行われたようですが、カンニングで捕まった人たちは法的には裁きは受けないそうです。
(出典:http://edition.cnn.com/2016/05/11/asia/thailand-high-tech-examination-cheating/index.html)

 

(Photo credit: Facebook via Coconuts Bangkok)

タイ人の友人曰く

タイでは入学試験とは別にスペシャルフィーを払うのが非常に一般的だそうです。
ちなみに、スペシャルフィーはお金に限らず現物支給の場合も。

『そういえば、図書館にカラーテレビが欲しいなあ、、』
『マックブック、新しいものがあると良いですね、、、』

そんなことも日常茶飯事。
また、スペシャルフィーの値段も年によって相場が違うそうです。
しかも、教師の親族にも袖の下を渡す場合もあるそうで、タイの学校に入学する前にも一苦労あるようです。

わたしの友人もスペシャルフィーを支払って高校に入学したそうです。
そんな、若干不公平に思える制度もタイ人はマイペンライ。
時が経てばそんなのどうでもよいそうです。
入ったもん勝ち。

その他にも、

・先生にスペシャルフィーを払って特別授業。(テスト内容を教えてもらう)。
・先生と良い成績を取るために寝る。(ちょっとやってみたい)
・袖の下。

真実は本人にしかわかりませんが、広く一般的に行われているのは確かなようです。

良い高校・大学に入るにはお金が必要なのです。
リッチに生まれた人は高等教育を受け、そうではない人は資金不足で成り上がれない。タイの格差社会は広がるばかりです。

お金を払えば、成績を良くしてもらえる。
つまり、お金を受け取る教員がいるということ。
ダークサイドに落ちるのは学生だけではないようです。

日本もそうですよね。

特に私立幼稚園・小学校など、裏口入学って絶対にありますよね。

学歴なんてお金で買えるんですね。
学歴の価値なんて本当そんなもんなのかもしれません。

そういえば、高校生のときに、学内推薦で慶應・早稲田に試験無しで入学している方々がいました。蓋を開けたら、人生の不条理・不公平が詰まった人選でした。

真面目に勉強して入学するよりも、お金がある人が勝つ世の中。
本作ではお金持ちの家庭とそうでない家庭の生活の差が強調されていました。
お金はあるけれど凡才(もしくはそれ以下)。貧乏だけれど天才。
そんな分かりやすい比較。

感想

タイでは、警察・政治家・教員はもう嫌な存在だそうです。
勿論、例外多数ですが。
それでも、以上の職というのは子供たちが将来なりたい職業なのです。

権力に逆らえないのなら、権力を持つ側になって何かをする。
何だかタイの悪い側面を見てしまったようです。

お金持ちなら全てがうまくいく。
タイの社会で生きていくには、お金は本当に大事なのは確定です。

わたしもどちらかというと経済的に豊かではない環境から成り上がってきたかと思います。
主人公たちほど天才では無いのですが、

勉強を一生懸命すれば人生は変われる。

その希望を胸に抱いて勉強をし、実際に人生を大きく変えられたと思います。
勉強・学ぶことにはそれだけのパワーがあるのです。

でも、タイに来てから、そして本作を鑑賞して思います。
もし日本ではない他のどこかタイのような国で生まれていたら、状況は一変。
ずっと、貧しい家庭から這い上がってこられなかったかもしれません。

『お金のためならば不正をする』

わたしからすると疑問な考え方なのですが、タイの方にとってはマイペンライ。
だってお金が無いと生きていけないから。

平和な日本という国に産まれたからモラルを保っていられるのかなと。
日本に産まれたことは超ラッキーなのです。

そして、
この映画は教えてくれました。

知識は最強の武器だということ。

それはどの世でも同じ。
そして知識を使ってお金を稼ぐ主人公は、たとえそれが不正であっても本当にかっこいい。

わたしは、

お金のためなら手段を択ばない。

とは言わない。
でも、

知識のためなら手段を択ばない。

そんなカッコいいことを言ってみた。

監督インタビュー

教育はビジネス。そしてカンニングもビジネスなんだ。タイでは、何年もカンニングのニュースが報道されるよね。1月には警察官試験の替え玉事件もあったし。もしくは、ハイテクなメガネや時計で画像を送りあうなどね。
カンニングは絶対に許されてはいけない。試験は自分自身で乗り越えるもの。でも、この世界は白黒はっきりつけられないグレーな部分で出来ていることもある。人によって倫理観は異なるからね。
この映画では、カンニングを肯定するものではないか、という意見も聞くけれど、観てくれれば、僕がどんなメッセージを伝えたいか分かると思う。
(出典:http://www.bangkokpost.com/lifestyle/film/1244098/bad-genius)

ニュース

・映画祭のオープニング作品に。
本作『Bad Genius』が2017年6月30日から開催される『New York Asian Film Festival 2017』のオープニング作品に選出されました。アセアン諸国からオープニング作品に選出されるのは初ということで本作の期待が高いということですね。
(出典:http://www.nationmultimedia.com/news/life/box_office/30316057)












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