映画をまだ観ていない方は、映画の結末まであらすじが掲載されているのでご注意ください。鑑賞後に読んでいただけたら嬉しいです。いつもありがとうございます。
映画『セールスマン(原題:Salesman)』を鑑賞してまいりました。
アカデミー賞外国語映画賞を受賞した秀作。

イラン映画ということでイラン人がたくさん。その濃いいい出演者たちのように、映画の後味は濃いものになっています。
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簡単なあらすじ
新居に引っ越してきた夫婦。ある時、夫が不在中、何者かが家に侵入し、妻が暴行された。
夫は犯人捜し、妻は後遺症に苦しむ。実はその家の前の住人は娼婦でたくさんの男が訪れていた。
概要
・小説『セールスマンの死byアーサーミラー』が大きく関わっています。
・ヒッチコック映画のオマージュがたくさんあったようですが、分かりませんでした。
・イランからアメリカへ入国できないため、話題。そのため、あからさまにアカデミー賞は本作を受賞させようとする勢い。芸術と政治って分離してないのかも!?

↑表紙からして負のオーラ。
ネタバレ
主人公と妻は、今まで住んでいた住居から強制退去を余儀なくされる。というのも、突然の工事が決まり、取り壊されるからだ。数か月は別の場所で生活しないといけない。
新居に越した夫婦。
素敵な家だがある部屋だけ鍵がかかっている。
『前の住民の荷物が残っているんだ。』
部屋を開けると、女性ものの洋服や靴がたくさんあり、それをせっせと片付ける夫婦。

主人公(夫)は高校で文学を教えつつ、趣味(副業)の演劇をしており、数日後、アーサーミラー著の『セールスマンの死』の講演が迫っている。
主人公(夫)は主演のセールスマン、妻は、そのセールスマンの妻役である。
妻は専業主婦、とはいっても子供はいないので、家で家事をして夫に尽くし、演劇に熱を入れる日々。
ある夜、妻が一人で家にいるときにチャイムがなる。
夫だと思った妻は鍵をあけたままシャワーを浴びる。
主人公が家に帰ると、血のあとが階段や部屋にべったり。バスルームを見て驚きの表情。
すぐに病院に向かう主人公。
隣人が妻を病院に運んでくれたようだ。
隣人『叫び声が聞こえたから上にいったら倒れていた。』
主人公『誰か心当たりはある?』
隣人『あの家はたくさんの男が出入りしていたから。』
前の住民は娼婦だったことが分かります。
退院した妻は家で過ごすも、記憶がフラッシュバックし怯える毎日。
舞台にも立てなくなるくらい。
そんな妻を看病しつつも犯人捜しを続ける主人公。

↑(前半)
ここから色々と間延びする演出やらエピソード。(50分くらい)
↓(後半)
ある時、犯人に目星をつけた主人公。
犯人を家に呼び出し尋問。
犯人『前の女だと思ったんだ。いきなり扉が開いたから入れてくれたのかと思った。』
主人公『ゆるさない。家族を呼んだから。』
犯人『それだけはやめてくれ、妻とは35年、子供はこれから結婚式を挙げるんだ。』
主人公『だからだ。こんな最低な父親であることを知っておいた方が良い。』
犯人は懇願します。涙を流します
主人公は抵抗する犯人を個室に閉じ込め、主演舞台へと出かけます。
舞台が終わった後、主人公は妻を連れて家へ向かいます。
犯人を見た妻。
妻『もうやめて、彼を離してあげて。』
主人公『どうして』
妻は家から出ていきます。しかし電話が。犯人の持病に心臓病で倒れたそう。(えええ!)
家に戻る妻は主人公と共に犯人を蘇生させます。
犯人『ごめんなさい』
主人公『。。。家族が迎えにくる』
妻『離してあげて。それ以上するなら、わたしはあなたとは今後一緒にはいられない』
犯人の家族が来ます。
憔悴した犯人を見た犯人の家族はすぐに家に運ぼうとします。
何も知らない犯人の妻『ありがとう、看病してくれて。ところで旦那のメガネは?』
主人公『こっちの部屋にある。おい、お前が取りに来い』
犯人と二人きりになった主人公。主人公は一発顔面パンチします。
犯人は解放され、帰る途中、再度、主人公のパンチがきいたのか、階段で倒れた犯人。(死んだかも)
救急車の明りに照らされた涙を流す主人公の妻。
どんな手段であれ、制裁を与えてしまった夫に対して、妻の心は死んでしまったよう。
そして、大きな部屋には主人公が一人取り残されているだけだった。


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感想
彼女『ジョージ君って本当にしつこいの。なんか噂だとわたしのこと好きみたいで。前、すれ違ったときなんか、お前、太った?とか言ってきて。マジでうざいんだけど(笑)』
彼氏『おい、俺の女に太っただと?絶対許さねえ。そいつ、今、家に呼び出せ。しばいてやる。』
彼女『え、そこまで深刻じゃないんだけど、別にわたし気にしてないよ。』
彼氏『俺の女が馬鹿にされたのにじっとしていられるか。お前が馬鹿にされるっ てことは俺も馬鹿にされているのと同じなんだよ。』
彼女『。。。(どうしよう、、、、彼氏くんって一度こうなると止まらないのよね。めんどくせー)』
こんな人っていませんでした?
もしくは、俺の母ちゃん馬鹿にすんじゃねえ、って怒る少年いましたよね。
好きな人や大事にしている人が馬鹿にされた時に不快になる気持ちは凄く分かるのですが、当の本人は別に気にしていない、なんてパターン、絶対ありますよね。ただ自分が怒りたいだけ、みたいな。そのせいで大事になったりするパターンもあるそうですね。
彼女のためとか言っておいて、結局は自分を満足させたいだけじゃん。

本作は自分の妻を暴行した男へのリベンジ。
そして、妻は本当にリベンジを望んでいたのでしょうか。
主人公の勝手な思い込み、『暴行されて辛かったであろう妻の代わりに俺が叩きのめす!』
となってしまいました。
妻は、様々な気持ちを抱えながらも犯人を『赦す』という決断をしました。
ましてや、夫に対して『それ以上、傷つけるのなら、私はあなたとは別れる』、そういわしめるくらいです。
主人公は葛藤します。
『俺はお前のためなのに。』
でも彼は気づいていない。結局は『自分の気持ちを晴らすため』ということを。
この世にたくさんの加害者と被害者が存在します。
犯した罪はどのように償えばよいのでしょうか。
ほとんどは法によって裁かれます。
結果的に、世間に広がって社会的な制裁になります。
中には、目には目を。
そう望む人もいるかと思います。
本作の夫もそのように報復をしようとします。
しかし、
そんなことしても被害者の心は完全には救われないんですよね。
最近、アイドルが200箇所刺されて。。という痛ましい事件がありました。
犯人は一刻も早く法の裁きを受けてほしいのですが、わたしが彼女の家族なら、法に逆らってでも私が代わりに裁きを下したいと思うでしょう。
でも、
いくら重い刑をくらっても被害者の心は癒されない。
若いアイドルの心や、傷ついた身体は一生そのままかもしれません。
他人がどんな方法で自分の代わりに裁きを下しても、本人が納得するのは難しいのではないか、わたしはそう思います。
他人が犯人を殴ったり蹴ったり、最悪、殺したとしても、本人の心に光は差し込みません
ではどうすれば救われるのか。本作は一つの答えを提供してくれました。
それは
『ゆるすこと』
結局は赦すこと。
やり返したら結局犯人とおなじ。
どんなことをされても許すこと。
憎いけれども敢えて許すこと。
裁くことも大事だけれど、なぜこんな犯罪を犯してしまったのか、おそらく可哀想な環境があったのだと思います。そんな加害者を許すこと。辛く難しいけれど赦すこと。
それこそが加害者への一番の愛であり、加害者が最も反省するきっかけを与え、償う方法なのではないか。
わたしはそんな事を、この映画から教えてもらいました。
世界各地でたくさんのテロや暴動が起きています。
恨みを感じるのではなく、理解し、ゆるすこと、そんな寛大な心を持ち続ければ世界平和につながる。
わたしはそう信じています。
(Photo credit:IMDb)
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