映画をまだ観ていない方は、映画の結末まであらすじが掲載されているのでご注意ください。鑑賞後に読んでいただけたら嬉しいです。いつもありがとうございます。

映画『聖なる鹿殺し (原題:the killing of a sacred deer, 2017)』を鑑賞して参りました。
不気味・・・
簡単なあらすじ
心臓外科医の主人公。とある青年を気にかけるも、その青年の企みで主人公一家が追い詰められる。
概要
コリン・ファレルとニコール・キッドマンという大スターを迎えて製作され静かに公開された本作。
最初から最後まで息が詰まるような雰囲気の中、家族の葛藤や苦しみが美しく描かれている一方で、何となく普通ではない登場人物達には恐怖すら感じました。
本作のモチーフはギリシャ神話『アウリスのイーピゲナイア』。
簡単な内容としては、神アルテミスの聖なる鹿を殺してしまったという父の罪を償うために娘が犠牲になる話です。
実際に劇中で主人公の娘は学校で『イーピゲナイア』のエッセイを書いて優秀な成績を収めているなど、ところどころ物語に絡んでいます。
監督はギリシャ人のヨルゴス・ランティモス様。
前作『ロブスター』では奇抜な設定が大受けし、カンヌ映画祭審査員賞を受賞。
本作でもカンヌ映画祭において脚本賞を受賞した傑作。
ラストの主人公の選択は狂気そのもの。
出演者
コリン・ファレル(主人公)
太い垂れ気味眉毛が印象的なハンサム俳優。
映画『フォーン・ブース』にて垂れ眉困り顔全開で人気を獲得して以降、数々の映画に出演を続ける大スター。
流石のコリンも歳を取り王子様から叔父様へ。多分近くにいたら好きになる。
彼のにゃんにゃんビデオが流出するも、問題なくハリウッドを駆け巡る(お世話になりました。)
主演のコリン・ファレルは脚本を読んだ後、吐き気がしたそう。
手術シーンは実際に行われた手術に、コリン・ファレルも同席して撮影したとの事。
ニコール・キッドマン(妻)

2000年代前半は彼女の時代。圧倒的な華と美しさ、そして演技力を兼ね備えたオーストラリア出身の最強女優。ハリウッドの象徴。
トム・クルーズの元妻。映画『めぐりあう時間たち』でアカデミー賞主演女優賞を獲得。全盛期を経た後は、しばらくヒット作に恵まれずも、ハリウッドの愛され女優の立ち位置は今も変わらず。
近年は脇に回って若手をサポートしながら存在感を発揮するキャリア構成であるが、それでも存在感は桁違い。
なんだか分からないけれど、蝋人形のように不自然な表情はまるでホラー映画を観ているよう。
『ムーラン・ルージュ』のサティーンは彼女以外考えられない。
[amazonjs asin=”B008MVQAWG” locale=”JP” tmpl=”Small” title=”コレクターズ・シネマブックムーラン・ルージュ (初回生産限定) Blu-ray”]↑ニコール・キッドマンの美貌にうっとり。
ネタバレ
1、主人公と青年
主人公は優秀な心臓外科医。
今日も無事に手術を終え、とある青年マーティンとの夕食のレストランへと向かいます。
青年マーティンは発達障害を抱えており、医者である主人公はほっとけないでいたのです。
主人公『これはプレゼントだ。』
主人公は青年マーティンに時計をプレゼントします。
帰宅後、
主人公『今日、マーティンという青年と会ってね・・・』
主人公は妻、そして娘と息子に報告します。
青年マーティンは娘と同じ高校に通う同級生です。
主人公は妻にこっそり言います。
主人公『青年マーティンのお父さんは10年前に自動車事故で亡くなってしまって、今はお母さんと二人で暮らしているようだ。可哀想だからほっとけないんだ。』

主人公の提案で、青年マーティンを家に招き食事をすることに。
娘は青年マーティンに気があるよう。
数日後
青年マーティンは主人公を食事に誘い、家に招待し、青年マーティンの母と3人で食事をします。
青年マーティン『一緒にお父さんが好きだった映画を観ようよ』
映画『恋はデジャブ』を鑑賞中、気分が悪くなった主人公は帰るために、家から出ようとするも、青年マーティンのお母さんに誘惑され、指をしゃぶられます。
主人公『辞めろ!!』
主人公は青年マーティンの家を出ていきます。
その後、
マーティンからの連絡が増え、段々とうざったくなってくる主人公は青年マーティンからの連絡の既読無視が増えます。
数日後
ウザい青年マーティンから連絡が無くなり、主人公に平穏な日々が訪れます。
大事件が発生するまでは。
とある朝、
主人公の息子が部屋から出てこないため主人公が息子の部屋へ向かうと、
息子『脚が動かない!!!助けて』
混乱する息子を連れて病院へ行くも、肉体的には何の問題も無く、脚が麻痺して動かない理由は分かりません。
一方で
そんな状況の中、
主人公の娘は青年マーティンとデート。
青年マーティンに頼まれて、大きな木の目の前で得意の歌を披露する娘。
翌朝
息子が入院する病院へ行く主人公。
そこには既に青年マーティンの姿が。
青年マーティン『主人公と二人きりで話したい。10分後にカフェテリアで待っているから』
病院のカフェテリアでサシで話す主人公と青年マーティン。
青年マーティン『あなたの息子さんの脚はもう良くならないと思う。』
主人公『どういう事だ。』
青年マーティン『ところで僕のお父さんの事は覚えている?交通事故の後、まだ息をしていて、あなたの手術を受けたんだ。それで死んだ。お父さんはあなたに殺された。僕の家族は崩壊した。お父さんが死んだ後、お母さんは僕の身体を求めるようになったんだ。』
主人公『???』
青年マーティン『僕の家族を崩壊させたあなたは責任を取らないといけない。それがバランスを保つために必要な事。そのためにあなたは、家族の誰かを自分の手で殺さないといけない。そうしないと、いずれ皆死んでしまうよ。』
主人公『ふざけるな』
青年マーティンは何らかの呪いをかけたようですが、主人公は信じていません。
青年マーティン『まずは脚が麻痺して歩けなくなる。次に食欲が全く無くなる、そして次に目から血を流す。最後に数時間して死ぬ。息子さんは既に死への第一段階だよ』
主人公が激怒、守衛に頼み青年マーティンを病院から追い出します。
その後、息子の大好きなドーナツを買っていくも、息子に食欲は全く失われてしまっていました。
同時に、
娘の脚も突然麻痺し、歩けなくなります。
画像出典:The Atrantic
すぐに妻に報告します。
妻『もしかして、青年マーティンのお父さんの手術の前に、あなたはお酒を飲んでいなかった?』
主人公『その可能性もある。でも覚えていない。それにあの手術はどっちにしろ助からなかった。』
妻は真相を確かめるために一人、主人公の医者仲間の元へ。
医者仲間『正直にいうと、マーティンは手術の前に少しお酒を飲んでいた。』
妻『・・・』
医者仲間『教えてあげたかわりに、マスターベーションを手伝え。』
妻『?????』
妻は医者仲間のそれをしごいてあげます。
主人公が手術の日にお酒を飲んでいた事が確定。
妻はなぜ息子や娘が旦那である主人公の過ちの償いをしなければならないのか、と疑問に思い、青年マーティンの家へ。
妻『子どもたちは関係ないでしょ』
青年マーティン『これは僕の気持ちを正当化する唯一の手段だから。』
青年マーティンは去っていきます。
妻の提案で、病院で入院している息子と娘は自宅療養する事に。
息子と娘は既に脚も動かず、食事も喉を通らないため、点滴で栄養を送っています。
翌朝
妻は主人公に連れられ地下室に。
そこにはアザだらけの青年マーティンが監禁されていました。
主人公は前の晩、青年マーティンを地下に拘束し、殴る蹴る。
主人公『早く呪いを解け!』
青年マーティン『出来ない。早く誰かを殺さないと手遅れになるよ。』
そして、
息子と娘も状況を把握しはじめます。
娘『お父さんは私達のどちらかを殺さないといけない。私は嫌だわ』
死にたくない娘と息子はそれぞれの方法で、良い子ぶってみたりと主人公(父)に媚を売るようになります。
娘は地下に拘束されている青年マーティンの所へ這いずって行きます。
娘『呪いを解いて。そして二人で遠くへ逃げましょう。』
青年マーティン『無理』
娘の姿が無く慌てる主人公と妻は探し回ります。
発見した娘は遠くまで逃げるために一人、無我夢中で血だらけで這いずっている娘。
娘『ごめんなさい。青年マーティンはクズ野郎だったわ』
その晩、
妻は青年マーティンを拘束していても無意味だと思い、開放します。
主人公は娘と息子のどちらかを殺さなければいけない、と悩み、二人の学校の先生に尋ねます。
主人公『ねえ先生、どちらが優れていると思いますか?』
『それは答えられません。』
主人公は決心。
妻、娘、息子を椅子に縛り上げ、顔を頭巾で覆います。
そしてライフルを手にします。
主人公『誰に当たるか分からない。』
主人公はマスクで顔を覆い、ロシアンルーレットのように一人ずつ銃を向け、引き金を引きます。
『ドン』
一発目は誰にも当たらず。
『ドン』
2発目も誰にも当たらず。
『パン』
3発目は発泡。
そして血が流れてきます。
その椅子に座っていたのは息子。
3人は青年マーティンを一瞥し、そっと立ち上がりレストランを出ていきます。
残された青年マーティンは彼らをじっと見つめています。
終わり
印象的だったのは、主人公(男)は娘に優しく、妻は息子に優しかったこと。
そして、主人公も青年マーティンも性的に何らかのトラウマがある事。
とりあえず、ニコール・キッドマンの腹筋がすごかった。
物語の中で、どのように呪いをかけたのかは定かではないのですが、青年マーティンは特別な力を持った神のような存在。
妻が青年マーティンの足にキスをしたりと、物語にたくさんの比喩の詰まった映画でした。