映画をまだ観ていない方は、映画の結末まであらすじが掲載されているのでご注意ください。鑑賞後に読んでいただけたら嬉しいです。いつもありがとうございます。

タイ・ゲイ映画『Malila: The Farewell Flower』を鑑賞してまいりました。
タイ映画は『緑色』がよく似合うと思う。
思い返せば返すほど素晴らしい映画だったと思う。
簡単なあらすじ
昔の恋人と再会するも余命は残り僅か
概要
タイの大スター・ウィアーを主演に製作された映画。
『同性愛』
『僧侶』
『カルマ』
『オバケ』
そんなタイの要素を詰め込んだ、静かだけれど心に残る素晴らしい映画。
タイのアカデミー賞にて、作品賞・監督賞・主演男優賞・助演男優賞を受賞するなど、2018年に最も評価された映画。
監督はトランスジェンダーの方だそうです。授賞時のスピーチでは『タイの映画界に対しての政府からの援助や保護が少な過ぎる』と訴えていました。
出演者
ウィアー(Sukollawat Kanarot)

タイのテレビ局チャンネル7の大スター。
かっこよすぎ!
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ネタバレ
1,生きる
バンコクの田舎・・・
主人公は愛娘を亡くし、嫁に逃げられ、その後はBaiSriのためのジャスミンの花を集める仕事に就いていました。
仕事中、主人公は元カレ・ピッチに出会います。
ピッチは人生で初めてお付き合いした恋人。
一方で、主人公に再会したピッチは複雑な顔をしています。
ピッチはBaiSri職人であり、毎日黙々とBaiSriを作っています。
ピッチ『BaiSriには死者の魂が宿ると言われているんだ』
*BaiSri:バナナリーフとジャスミンの花で装飾された、主に葬式の時に用いられる装飾品

ピッチはバンコクからとある理由で田舎に帰ってきていました。
再会した二人は過去を懐かしみつつ、かつて二人が過ごしたお気に入りの場所へと行きます。
ピッチ『僕は時々、無価値な人間だって思っていた。でもBaiSriを作っている時だけは生きているって感じるんだ。それに体調も良くなっている気がする。』
ピッチは末期がんに犯されており、顔色も良くないです。
色々な病院で治療を受けたり、人に薦められた薬を試したりとしましたが、全く良くならず、誰も信用していません。
ピッチ『君(主人公)は今は無価値だよな。娘を亡くして、嫁さんにも逃げられて、今は毎日飲んだくれだろ。』

主人公とピッチは二人、村から離れた森の中で過ごす事に。
ピッチは黙々とBaiSriを作っています。
主人公『そういえば、君がBaiSriを作っているのを見るのは初めてだ。とてもキレイだ』
ピッチ『僕がバンコクへ移住した時、君はこの街に残って僕についてきてくれなかった』

そんな静かな言い争いをする二人ですが、思い出の木の下で寝そべる二人。
ピッチ『僕はもう好きな事しかしたくないんだ。』
ある雨の激しい晩、
ピッチと主人公は二人、情熱的な夜を過ごします。
主人公『僕は出家しようと思っている。君の病気のためにもさ。もし出家から帰ってきたら一緒に生きてくれないか。』
ピッチ『うん』
主人公『出家の儀式の時の装飾を作ってほしい』
ピッチ『分かったよ』
そして会話は続きます。
主人公『死体を抱きしめた事はあるかい?』
ピッチ『死んだら何も感じなくなるさ』

主人公が仕事から帰ってくると、ピッチは吐血して倒れています。
すでに絶命。
主人公は涙ながらに抱きしめます。
BaiSriを抱きしめ、じっと見つめるピッチの幻覚をみる主人公。

2,死
出家した主人公。
坊主になり、先輩と共に修行に励む日々。
先輩僧侶は経験豊富で、どんな問題にも動じない僧侶の鏡のような人。
ある時、
死体を発見する主人公。
その死体はもはや原型が無く、体中、蛆虫がたかっています。
主人公は気分が悪くなり嘔吐、一方で先輩僧侶は死体に向かって手を合わせています。
『心のなかで死体の姿を思い出し、また忘れたら見つめるんだ。』
先輩僧侶に教わった方法で、死体の魂を成仏させようとする主人公。
ある雨の激しい晩、
主人公は先輩僧侶が死体に向かって涙を流している姿を発見します。
そして死体を見ると、その死体はピッチである事が分かります。
ピッチは目を開けます。
主人公はピッチを抱きしめます。
主人公には生前の美しいピッチに見えています。

しばらく時が経ち、
主人公が気がつくと、そこには蛆虫が湧いている死体。
生前のピッチの面影はどこにもありません。
そのまま静かに川で水浴びをする主人公。
終わり

・先輩僧侶が泣いていたのは、死体(ピッチ)の魂に対して、いくら経験を積んでも成仏させる事ができなかったから。
そして結局、主人公と死体(ピッチ)の愛のパワーが、ピッチを成仏させた。
・『生』と『死』。自然に囲まれたタイの田舎では、自然と魂との関係はもっと密接なもの。
・死んだら水になって流れていく。最後の主人公の水浴びのシーンはタイ人にしか分からない死生観があるのではないかなと思いました。