映画をまだ観ていない方は、映画の結末まであらすじが掲載されているのでご注意ください。鑑賞後に読んでいただけたら嬉しいです。いつもありがとうございます。
簡単なあらすじ
主人公の中年男性。彼の目線では、自分以外の他人は全て同じ顔で同じ声。
ある時、滞在中のホテルで自分以外の声で話す女性と出会う。
概要
ストップモーションアニメ映画。
批評家から絶賛評を獲得。ピクサーの大傑作映画『Inside out』という強力ライバルがいなければ、
アカデミー賞アニメ映画部門を受賞していたかも。
本作の一番の特徴。
それは、全ての登場人物(他人)が同じ顔で同じ声だということ。
その原因は主人公の精神的な疾患のため。
主人公は他人を認識・区別できないのです。
しかし、あるときに(主人公にとって)自分とは違う声を話す女性が現れる。
そんな不思議な設定。

↑みんな同じ顔で同じ声。
本作、完全に大人向けのアニメ映画となっており、夜の営みシーンや欲求不満な男女の駆け引きなども観ることができます。
孤独で精神病な男。彼から見える世界とは一体何だったのか。
この不思議な世界も最後のたった一言で全てが明らかになる、
あっと驚く最後の結末。
監督はチャーリー・カフマン。映画『マルコビッチの穴』『アダプテーション』など奇妙な設定や世界観を得意とする人。

ネタバレ
カスタマーサービスのエキスパート、マイケルは自身の講演会のためにオハイオ州シンシナティへとやってきました。
飛行機の中でもタクシーの中でも、みんなやたらと話しかけてくるのウンザリ。
ホテルに到着するとルームサービスを頼みます。
しかし、頭のなかには以前交際していたシンシナティに住む元カノのことを思い出し、元カノに電話します。
マイケル『やあ、元気?今シンシナティにいるんだ。今は子供がいるんだよ』
元カノ『久しぶりね。電話してくれて嬉しいわ。今から会いに行っても良いかしら。でも前よりも太っちゃったわ。わたしは今は独身よ。』

↑タクシー運転手も主人公と同じ顔で同じ声。
マイケルはバーで元カノと会います。
元カノ『一体どうして突然いなくなっちゃったの?』
マイケル『色々あったんだ。精神的な事なんだ。ごめんよ。』
マイケルは酒をグイグイ飲んでいます。
マイケル『僕の部屋でゆっくり話さないか?』
元カノ『はっ???わたしはあなたと寝る気は無いわ。本当最低なクズ野郎ね。』

↑みんな主人公と同じ顔で同じ声。
酔いつぶれたマイケルは街をぶらぶら。
息子のお土産におもちゃ屋さんに入ります。
しかし、そこは大人のおもちゃ屋さん。
カウンターに展示されている日本の舞妓さん人形が目に留まります。(←超重要)

↑映画の中でも超重要な存在。
ホテルに戻ったマイケル。
シャワーを浴びていると女性の声が。
『女性の声が聞こえる!!』
マイケルにとって全ての他人は同じ顔で同じ声なので驚いています。
そこでマイケルはリサと出会います。
リサは友人と共にマイケルの講演会へ行くためにはるばる遠方からやってきていました。

↑声は違うけれど、顔は主人公と同じ。
マイケルと女性二人はバーで飲みます。
マイケル『こんな事言うのは変だと思うんだけれど、リサ、一緒に部屋で飲まないか?』
リサは戸惑っていますが、友人の後押しでマイケルの部屋へ行くことに。


リサ『どうして私なの?わたしはスマートではないし顔も美しくない。わたしは特別な人間じゃないわ』
リサは髪で隠していますが、顔に大きなキズがある事が分かります。
マイケル『君は美しいよ。さあ、もっと話してくれ。君の声は不思議な魅力があるよ。君は特別さ』
マイケルはリサの声にうっとりしています。
リサ『わたし、シンディ・ローパーが好きなの。彼女って自分の個性を貫いているでしょ。彼女の歌が大好き』
リサはシンディ・ローパーの曲を歌い始めます。
マイケルは興奮。
そのままリサと共に夜の営みへ。
リサ『わたしって言語が大好きなの。フランス語、イタリア語、、、それと日本語が大好きなの』
マイケル『君は“anomaly“だよね。ニックネームはアノマリサ(anoma”lisa”)』

マイケルは夢の中。
夢の中の他人『あんたとリサはうまくいかない。あんたとリサはうまくいかない。』
マイケルは自分の顔と声の他人から逃げます。
するとマイケルの顔がポロッと落ちてしまいます。
悪夢から目が覚めると、そこにはリサが。
リサ『私達、これからも一緒よね。あなたと出会えて幸せだわ』
しかし、マイケルはリサの食事マナーが気になり始めます。
すると、リサの声がその他大勢のように段々とその他大勢の声に近づいていきます。

場面は変わり、
マイケルの講演。
しかし、リサの事が気になって講演は大失敗。

そのままロサンゼルスの自宅へ帰るマイケル。
息子には、なんと大人のおもちゃ屋で購入した日本の舞妓さんロボットをプレゼント。
息子『こんなの嬉しくないんだけどな。』
マイケルの妻『なんだか、このおもちゃに精子みたいのが付いているんだけれど!』
マイケルの妻は、マイケルのためにおかえりなさいパーティーを企画してくれていました。
マイケル『この人達は一体どこの誰だ?』
マイケルには他人を区別できません。妻は泣いてどこかへ行ってしまいます。
一人階段に座るマイケル。目の前には日本の舞妓さんロボット。
舞妓さんのロボットは歌いだします。
『もーもたろさん、ももたろさん。。。。。』
その声はリサと似たような声です。
終
分かりにくいのでまとめると、
・リサは主人公マイケルの妄想で、日本の舞妓さんロボット(大人のおもちゃ)=リサ。
・夜の営みも日本の舞妓さん人形(大人のおもちゃ)との事だったので、人形に精子が付着していた。
・リサの顔の傷と舞妓さん人形(大人のおもちゃ)の顔の傷の一致
・そもそもリサが実際に実在するのかは謎。
・マイケルは完全に精神病。脳科学的には’『フレゴリの錯覚』という疾患だそう。
監督曰く、色々な解釈が出来るようにつくったそう。
映画の最後で、主人公がリサに名付けたニックネーム『アノマリサ』は『天国の女神』という意味である事が分かります。
主人公にとってリサは救いの女神のような象徴であり、やはりリサは空想上の人物だったのでは、と個人的には思いました。

↑結局、性欲の強いオヤジの妄想話というオチ。