映画をまだ観ていない方は、映画の結末まであらすじが掲載されているのでご注意ください。鑑賞後に読んでいただけたら嬉しいです。いつもありがとうございます。

ホラー映画『サスペリア(Suspiria, 2018)』を鑑賞しました。
意味が分かると超スカッとするグロテスクな物語。
簡単なあらすじ
呪われたバレエ学校で行われる魔女の儀式
概要
1977年に公開されたカルト映画『サスペリア』のリメイク。
個人的にはリメイクではなく全く別の新しい映画のように感じました。
何度も頓挫したプロジェクトも漸く完成に漕ぎ着けた本作。
ヴェニス国際映画祭で初お披露目されると、賛否両論ながらも、観客の度肝を抜くグロテスクで過激な映像は癖になってしまうほどの美しさ。
映画が見終わってから魔女の魔法にかかってしまったが如く、映画『サスペリア』の事で頭がいっぱいの日々。
意味が分かると、こんなにも爽快な映画は無い、最高のスカッと映画!
賞レースシーズンで完全にシャットアウトされた感のある本作。もっと評価されても良いと思う。
1977年のオリジナルは、『この学校、何かおかしい。もしかしたら・・・魔・・・・女??』
2018年の本作は、初めから魔女パワー炸裂で、魔力を持った魔女が学校を支配している、前提です。
出演者
ダコタ・ジョンソン(スージー)

フィフティ・シェイズシリーズを見事世界的ヒットに導いた時の人。
両親はな、なんと母メラニー・グリフィス& 父ドン・ジョンソンという親の14光女優。
しかし、そんなやっかみも吹き飛ばす演技力と脱ぎっぷり。
本作では謎の留学生スージーを演じるも、感情を表に出さない役どころなので旨味は意外と無いかも。
それでも妖艶かつ純粋なスージーを完璧に演じたダコタ・ジョンソンの大ファンになりました。
ティルダ・スウィントン(ブランク夫人)

存在だけで異様な雰囲気を漂わせる怪女優は何をしてもキマる!
本作では学校を仕切る先生役&マザー・マルコス&心理学者ジョセフの3役を完遂!
すごすぎ!
ミア・ゴス(サラ)

スージーの友人役。
パトリシア(クロエ・グレース・モレッツ)

本作ではフレッシュさを封印。ほとんど死んでいるような役。
監督
ルカ・グァダニーノ(Luca Guadagnino )

青年同士の恋愛を超スウィートに描いた『君の名前で僕を呼んで』で世界中にその名前を知らしめた監督が、今度は残酷でグロテスクな映画『サスペリア』を世に送ります。
ネタバレ
1,逃亡者パトリシア
1970年台ベルリンの冬。
挙動不審のパトリシア(クロエ・グレース・モレッツ)は雨に打たれながらも、心理学者ジョセフの元へやってきます。
↑ジャージだとスターオーラが消える。
パトリシア『私の通っているバレエ学校は凶悪な魔女に支配されている。』
全く信じていない心理学者ジョセフですが、パトリシアの怯えた態度は気になっています。
パトリシアはバレエ学校のエース的存在で次回の演劇の主演を任されています。
パトリシア『最初は学校生活が心地よかった。でも次第に魔女達、特にブランク夫人が夢にまで出てくるようになって、わたし、どんどんおかしくなっていくのが分かるの。誰かが私の身体を乗っ取ろうとしている事も』
パトリシアは魔女に支配されているバレエ学校について自ら調べた内容を話します。
すると、
突然、パトリシアは自分の荷物などを全て置いて出ていきます。
↑情緒不安定を極めたクロエたん。
2,アメリカからの留学生スージー
アメリカから遥々ベルリンのバレエ学校へやってきたスージー(ダコタ・ジョンソン)。
老舗のバレエ学校はブランク夫人を中心として数名の先生たちがいますが、全員魔女です。
素性も知らない入学希望の謎のアメリカ人・スージーに端から期待していない先生たち(魔女)
↑怖すぎるブランク夫人。
スージーは物静かだけれど、独特の雰囲気を持つ女性。
すぐにダンスレッスンを開始すると、評価が一転、スージーの才能にバレエ学校の先生たち(魔女)は興味津々。
主演女優パトリシアが逃亡したため、現在、次回の演劇『ヴォルク』の主演女優を探している最中の先生たち(魔女)
学校を仕切るのはブランク夫人。
ブランク夫人は劇の演出や指導係であり、他の先生よりも偉い地位です。
ブランク夫人『パトリシアは当学校を辞めました。新しい主演女優を探しています。』
パトリシアが逃亡した事を知っている先生たち(魔女)ですが、嘘をつきます。
↑ただの留学生でないよ!
スージーと共に主演女優候補の白羽の矢が立ったのはロシア人オルガ。
オルガは才能あるダンサーですが、過度なプレッシャーから精神不安定、挙げ句の果てに、ブランク夫人に向かって言い放ってしまいます。
オルガ『この魔女が!!』
思いの外、事実かつタブーの言葉を放ったオルガはレッスン部屋から出ていってしまいます。
オルガは逃亡したパトリシアと仲良しだったので事情を知っていたのかもしれません。
先生たち(魔女)は目を合わせ、不穏な雰囲気が・・・。
↑少子高齢化の影響か平均年齢高めの先生たち(魔女)。
3,オーデション
主演女優候補のオルガが自滅したため、スージーがオーデションを受けることに。
ブランク夫人『本能のままに踊りなさい。まるで誰か他人が乗り移ったかのように踊りなさい』
ブランク夫人はそっとスージーに魔法をかけます。
↑いきなり主演オーディションというシンデレラストーリー。
一方で、
魔女発言で問題のオルガは、地下の謎の鏡張りの部屋に閉じ込められます。
スージーのオーデション。
スージーは凄まじい迫力で踊りだします。
ブランク夫人もじっと見つめています。

一方で、閉じ込められているオルガは、スージーのダンスの動きに合わせて身体が勝手に動き、手足が折れたり、内臓が破裂したりと大変です。(ブランク夫人の魔法により、スージーのダンスがオルガに影響を与えている。スージーは気づいていません。)
スージーが激しいダンスをすればするほど、オルガの四肢はメタメタにされていきます。
無事、スージーはオーデションに合格。舞台『ヴォルク』の主演女優へと一瞬で上り詰めます。
別室のオルガは見るも無残な姿ですが、かすかに生きています。
↑このシーンだけ観たくない。
4,魔女投票
ブランク夫人を含めた先生たち(魔女)は何やら怪しい集会を行っています。
『次の当学校のボス魔女は誰にする?』
マザー・マルコスは、ブランク夫人をも超えるバレエ学校の真のボス魔女。
しかし、何十年と時を経ており老化のため、あまり動けません。
『引き続きマザー・マルコスがボスね』
結局、引き続き、マザー・マルコスが代表に就任。
しかし、実質的な権力や力のあるブランク夫人を支持する先生たちも少数ながら存在します。
魔女たちの目的。
それは、マザー・マルコスの新しい器(身体)を探す事。
そしてバレエ学校のダンスはその儀式に必要な魔女ダンス。
つまり、舞台『ヴォルク』は魔女の生贄の儀式だったのです。
先生たち(魔女)は何も知らない少女を連れてきては生贄探しをしていた、ゲス学校だったのです。
パトリシアは失敗に終わり(逃げ出した)、新しい器の候補はスージーに。
マザー・マルコスも衰弱しており、先生たちも急いで生贄の儀式『ヴォルク』を遂行しようと必死です。
マザー・マルコス『スージーを生贄にし・・なさ・・・い・・・・』
マザー・マルコスさん、死にそうです。
*重要:マザー・マルコスは、三代最強魔女マザー・サスペリアムであると先生たちは信じているため、敬い、崇めています。
全ての魔女は三代最強魔女マザー・Lachrymarum, マザー・Tenebrarum, そしてマザー・サスペリアムに仕えていると考えられています。
↑マザー・マルコス『最近は根性の無いゆとりが増えたわ。』
5,心理学者ジョセフと友人サラの好奇心
心理学者ジョセフはパトリシアが行方不明になっている事を知ります。
『あのバレエ学校が関係しているに違いない!』
ジョセフはパトリシアの話を信じ始めます。
そこで、警察をバレエ学校に送るも、魔女たちの魔法により失敗に終わります。
ジョセフも、愛する妻と第2次大戦中に生き別れになり、深い傷を抱えつつ、妻の帰りを待っている老人。
↑ティルダスィントンが演じてます!
スージーは学校生活を送る中、サラという生徒と仲良くなり、色々と話しを聞かせてくれます。
・バレエ学校は第2次大戦真っ只中も開校されていたこと
・生徒は無料で学校に通える事など。
スージーは先生たち(魔女)のせいで悪夢を見てうなされる日々ですが、サラがいつも看病してあげています。
↑脚ながい。
ある時、
ジョセフは、サラに声をかけカフェに誘います。
ジョセフ『君たちの学校は危険な人たちで溢れている!パトリシアも犠牲になった』
知らない爺さんの話に全く聞く耳持たずのサラ。
その晩、
学校の地下から怪しい音が聞こえ、音のする方へ行くサラ。
地下へ到着すると先生たち(魔女)の謎の会話&行い。
サラはやばい、という表情。
サラ『爺さん(ジョセフ)の言うことは本当だった。この学校は可怪しい。』
そんなサラのスパイ行為に先生たち(魔女)は勿論気づいています。怖!
先生たち(魔女)はやりたい放題です。
同じく、スージーも学校の秘密に気付き始めているようです。
↑サラ、逃げて!
6,スージーとブランク夫人
いよいよ儀式『ヴォルク』の日が近づいてきました。
スージーとブランク夫人はレッスンを行う中、信頼関係のようなものが生まれています。
また、スージーがどうしても習得できない動き(ハイジャンプ)は、他の生徒から能力を奪い、スージーに授ける、という特別待遇。


二人はテレパシーで会話。
スージー『あなた(ブランク夫人)はわたしの事を愛しているでしょ。しかも母親のように』
ブランク夫人は戸惑いつつもまんざらではない感じ。
教える立場のブランク夫人はなぜ、スージーを母親のように感じるのか。(娘のように感じるのであれば理解できるが何故母親のようなのか・・)
『ヴォルク』のダンスをスージーにずっと教えてきたブランク夫人は、スージーの真の姿に気づき始めています(感じ始めている)。
他の先生たち(魔女)は全く何も感じ取っておらず、スージーを生贄にして、マザー・マルコスの復活を楽しみにしています。
そして、以下の事もわかります。
・スージーは小さい頃からこのバレエ学校へ来る運命だった事。
・スージーの母親は、スージーを産んだ事を心底後悔している事。
↑スージー、一体何者?それよりもブランク夫人の顏が怖い。
7,儀式『ヴォルク』
遂に生贄の儀式『ヴォルク』の日。
生徒たちは気合を入れる中、
サラは地下の隠れ部屋を発見します。
パトリシア『助けて!サラ!』
いなくなったはずのパトリシアの自分を呼ぶ声。
そこには、瀕死状態(ゾンビ状態)のパトリシア、そして四肢の無いオルガが放置されていました。
逃げるサラですが、先生たち(魔女)に捕まってしまいます。
観衆が見守る中、儀式『ヴォルク』が始まります。
圧巻のパフォーマンス。
終盤、洗脳され、心を無くしたようなサラも儀式に参加。
遂に、全ての生徒が揃い、儀式完遂!
と、思いきや、サラが突然倒れ、儀式は中断。
生贄の儀式は失敗したようです。
↑スタイル抜群美女はベージュのパンツをも着こなす。
8,儀式『ヴォルク』再び。スージー、準備完了!
先生たちはその晩、生徒たちだけを集めて再び儀式『ヴォルク』を行います。
そこにはマザー・マルコス、そして瀕死のパトリシア、オルガ、そしてサラもいます。
しかし、なぜだかスージーの姿はありません。(おそらくブランク夫人がスージーを守るためにわざと呼ばなかった。)

ひとり、外から帰ってきたスージー。
スージーは、儀式の行われている地下へと向かいます。
儀式の最中に突然現れたスージー。
マザー・マルコス『この娘を生贄に捧げよ!!!』
しかし、スージーを巻き込みたくないブランク夫人は戸惑います。
そんな反抗的なブランク夫人の首をメッタ切るマザー・マルコス(魔力は確かに強い)
スージーは顔色一つ変えずにマザー・マルコスに話しかけます。
スージー『あなたは三代最強魔女のうちのどの魔女なの?』
*重要:マザー・マルコスは、三代最強魔女マザー・サスペリアムであると先生たちは信じているため、敬い、崇めています。
全ての魔女は三代最強魔女マザー・Lachrymarum, マザー・Tenebrarum, そしてマザー・サスペリアムに仕えていると考えられています。
マザー・マルコスは自信を持って答えます。
マザー・マルコス『わたしはマザー・サスペリアムじゃ』
スージーは驚きの一言。
スージー『そんなの嘘。だった私がマザー・サスペリアムだもの』
スージーは魔女、しかも三代最強魔女の一人マザー・サスペリアムだったのです!!
そしてスージーはゾンビのような黒い存在『DEATH』を呼び出します!!
スージーは、自分をマザー・サスペリアノと偽って、先生たち(小魔女)を支配し、罪のない人たちをたくさん犠牲にしたマザー・マルコス、そして一部の先生たち(マザー・マルコス派の魔女)を魔法で滅ぼします。
そして、スージーは、サラ、オルガ、パトリシアを苦しまない方法で亡きものにし、救い出してあげます。
↑スージーは悪い魔女の退治にやってきた魔女!
9,翌朝
儀式が行われた部屋は血の海ですが、スージーによって生かされた数名の先生(魔女)が掃除。
ブランク夫人も首の傷は深いですが、なんとか生きています。
そして生徒たちは、昨晩の記憶は抹消されています。
ブランク夫人はバレエ学校を去ったことになっています。
つまり、
スージーは、魔女に支配されたバレエ学校の悪行を暴き、解決するためにはるばるアメリカからやってきた最強魔女。
しかし、強大な力(マザー・マルコスとその仲間の先生たち)に立ち向かうために時間が必要だったため、力を貯めつつ、何も知らないふりをしながら、ずっと様子見していたのでした。
怖い女・・・
●まとめ
バレエ学校に入学したスージー。
そこは魔女たちに支配された学校。
学校の目的は一番偉いけれど老衰しそうなマザー・マルコスの新しい肉体となる生贄探し。
突然現れた才能の塊スージーが生贄候補に。
しかし、スージーは単なる留学生ではなく、最強の三大魔女の一人が実はスージーだったため、マザー・マルコスは返り討ちに遭う。
解説
スージー(マザー・サスペリアム)

アメリカからの留学生と思いきや実は三代最強魔女の一人、マザー・サスペリアム。
生まれたときからずっと、ベルリンのバレエ学校へ来る運命だった存在。
主演女優パトリシアが疾走した抜群のタイミングでバレエ学校の門を叩いたスージー。
敬虔な両親に反対されながら小さい頃からダンスの練習に励み、オーデションのダンスも完璧に踊るスージー。
そんなマザー・マルコスを撃退する気満々のスージーですが、
スージーの母親は、スージーをこの世に爆誕させた事を心底後悔。おそらくスージーの母親も魔女であり、スージーの真の姿も知っていたのだと思います。
マザー・サスペリアム

マザー・サスペリアムは『死を司る』魔女(通称『溜息の母』)。
なので、自由自在に命を奪う事ができます。
言い換えると、『生を司る』魔女とも言えるかと思います。
彼女自身が一番、『死』という事に関して哀れみの気持ちを持っていたのではないか、そんな風に感じました。
そのため、自分の欲求のためだけに罪のない若い少女を犠牲にするマザー・マルコス&先生たちが許せなかったのかと。
ちなみに、1977年に制作されたサスペリアは3部作であり、それぞれの三大最強魔女が描かれています。
↑サスペリアの映画3部作
ブランク夫人

学校運営など実質的な権威は自分のはずなのに、主導権は老いぼれで役立たずのマザー・マルコス。
というのもマザー・マルコスは三代最強魔女のマザー・サスペリアムだから、しょうがないか。それでも、
・私の方があんな老いぼれよりも力があるし・・・
・『マザー』として全然尊敬できないし・・・
・儀式『ヴォルク』の振り付けも演出も全部わたしが考えたものだし・・・
ブランク夫人はかなりの地位にありながらも、学校のトップ(マザー・マルコス)に反抗的なのです。
そんな時に現れたスージー。彼女の魔力はブランク夫人も驚くほど。
次第に、『スージーがマザーなのではないか。』と感じ始めると思うのです。
それは、ブランク夫人自身も魔女として一流のため、『マザー・マルコスの胡散臭さ』&『スージーの真の姿』を見抜いていたからだと思います。
他の先生たちはスージーの存在に全く気づいていません。
もしかしたら、スージー自身、自分の正体に気付いたのはバレエ学校に入学してからだった可能性もあります。
そんな何も知らないスージーが、自分の魔女としての素質に気付かせ、才能を開花させたのはブランク夫人だったのかもしれない、そんな気もします。
心理学者ジョセフ

本作は第2次大戦終戦30年後くらいのドイツ・ベルリン。
ナチスの悪行によるPTSDや、強制収容所に送られたまま帰ってこない家族の安否などで心がボロボロの人たちがそこら中に存在している時代。
ジョセフもその一人。
愛する妻が強制収容所へ送られたまま帰ってこない。妻の帰りを待ちつつも最悪の事態も受け入れ始めている。それでも妻の帰還が何よりもジョセフの希望。
結局、妻は死んでしまった事がスージーにより明かされます。
スージー『あなたの妻は強制収容所で衰弱もあって凍死しました。でも、たくさんの温かい人たちに囲まれての最期でした。そして最期に思い出した事は、あなた(ジョセフ)と最初にデートをした思い出です。』
ジョセフは本作唯一の男性キャラクター。
彼は妻を救えず、更には助けを求めに来たパトリシア、そしてサラをも救えなかった男性。
つまり、男として女を守れなかった駄目な男性。
それはウーマンリブ運動と共に家父長制度『あるべき男らしさ』が崩壊し始めた時代を反映するキャラクターなのかもしれません。
関係
・マザー・マルコス&先生たち : ナチス(強制収容所)
・ブランク夫人:ドイツ軍ながらもナチスのやり方に疑問を抱く人物
・生徒たち:強制収容所に従事するドイツ軍兵士
・パトリシア:強制収容所に従事するドイツ軍の脱走兵
・心理学者ジョセフ:反ナチスかつナチス政権を生き延びた人。(妻は強制収容所で死亡)
・スージー:The USA
こんな関係性が示唆されていると思いました。