【ネタバレ&内容】タイ映画『ブンミおじさんの森』カンヌ国際映画祭最高賞受賞作。『森』は命の象徴。








映画をまだ観ていない方は、映画の結末まであらすじが掲載されているのでご注意ください。鑑賞後に読んでいただけたら嬉しいです。いつもありがとうございます。

タイ映画『ブンミおじさんの森』(原題・タイ語: ลุงบุญมีระลึกชาติ, 英語: Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives)を鑑賞致しました。

出会えてよかった。タイに来てよかった。

死ぬ前にもう一度観たい映画。

簡単なあらすじ

死期が迫るブンミおじさん。ある日、死んだ妻と行方不明の息子が現れる。

彼らは皆で深い森の中へと入っていく。

概要

タイ映画史上初、2010年カンヌ映画祭最高賞であるパルム・ドールを受賞した本作。

タイの東北部の『森』を舞台に繰り広げられる摩訶不思議な出来事。

 

タイにとっての森。

神秘的で美しくもあれば、不気味な程静かで恐ろしくもある森。

 

『森』は生と死を繰り返す神秘的な場所。

森のなかには人間以外の生物、精霊、おばけ、未知の動物など、『生』なるものが一同に存在する異空間。

『生』があればそこには『死』もある。

そして、そんな森にはすべての記憶も存在している。

ブンミおじさんは森の中で過去、そして未来を思い出します。

 

監督はアピチャートポン・ウィーラセータクン(『トロピカル・マラディ』など)。

ネタバレ

『森を前にすると自分たちの前世であった動物や生き物の姿が見えてくる』

冒頭、

真夜中の森の中、一頭の牛が森へと逃げ出し、そこへ現れる男。その光景を木陰から眺める謎の赤目の生物。

タイ東北部の森の中に在る集落。

ジェンは、腎臓病に冒され寿命わずかの義兄のブンミおじさんを訪ねます。

ブンミおじさんは19年前に妻を亡くし、独り身で農園を営んでいますが、病気に冒されてからはラオス人の出稼ぎ労働者の青年に世話をしてもらっています。

ジェンはブンミおじさんの亡き妻の妹です。

 

とある晩、

ブンミおじさん、ジェン、そして親戚のトンを呼んで夕食を共にしていました。

すると、突然、女性の亡霊が現れます。

一同驚くも、その亡霊はブンミおじさんの亡き妻でした。

 

ブンミおじさん『久しぶりだね。会えて嬉しいよ。ずっと君のことを心配していたんだ。元気だったかい?』

 

驚きよりも嬉しさが勝ったブンミおじさん一同は幽霊である亡き妻を歓迎。

 

幽霊である亡き妻『ブンミおじさんが心配で来たの。今、病気なんでしょ?それとお供え物やお祈りをしてくれてありがとう』

 

しばらく談笑していると、背後から物音が。

暗闇から現れたのは赤い目の怪物。

 

ブンミおじさん『君は誰だい?』

 

ブンミおじさんは赤い目の怪物に話しかけます。

 

赤い目の怪物『僕はソンブン。あなたの息子です。』

 

赤い目の怪物は、10数年前に失踪したブンミおじさんの息子でした。

息子が明るい光に照らされるとその姿は毛むくじゃらの猿(夜行性で暗闇では赤い目になる。)。

 

『ずいぶん久しぶりだね。それに毛も伸びたわね』

 

息子はブンミおじさんの最期が近いため、会いに来たのでした。

 

ブンミおじさん『君(息子)が失踪してから村中を随分と探したんだよ。』

 

息子『はい、お父さん(ブンミおじさん)が僕を探しているのをずっと遠くから観ていました。でも、僕は森に魅了され、森の中で猿の精霊に出会いました。そして僕は彼らの仲間になりました。そうしたらこんな姿になり、今は、結婚し、家族と暮らしています。』

 

息子によると、ブンミおじさんの死期が近づき、森の精霊や動物たちがブンミおじさんの家の近くに集まってきているとの事。

翌日、

ブンミおじさん『こんな病気になったのはカルマだよ。この森で多くの共産党の若者を殺したし、農場では虫も殺しているしね。』

 

ジェン『そんな事はないわ。』

 

ジェンは養蜂場などブンミおじさんの農場を散歩します。

昨晩、ジェンは農場を引き継ぐようお願いされていました。

 

場面は代わり、

はるか昔の古代。

森の中を進む王女一行。

 

王女は森の中の美しい滝へ到着し、水面に自分の顔を映します。

王女は顔に大きな火傷を負っており、酷く気にしており、泣いてしまいます。

川面には火傷跡のない美しい顔が写りこみます。

 

王女が泣いていると声が聞こえます。

 

『王女様、泣かないでください。悲しみを分けてください。あなたは本当に美しいです。』

 

その声の主は水の中に住むナマズ。

 

王女『ナマズ様、わたしを美しい姿に変えてください。愛してください』

 

王女は水の中へ入り、そのままナマズ(神様)と結ばれます。


↑王女様はブンミおじさんの前世の一つ。

 

場面は代わり

ブンミおじさんは幽霊となった亡き妻と過ごし、ついに最期の時が訪れたことを悟ります。

ブンミおじさんは死への恐怖がありましたが、亡き妻との再会で乗り越えたようです。

死期を察したブンミおじさんは、ジェン、亡き妻、親戚のトンの4人で森へと入っていきます。

猿の精霊となった赤目の息子やその仲間もついてきています。

 

4人は洞窟へたどり着きます。

ブンミおじさんは、あの世とこの世の間のような洞窟の中で前世や未来を観ます。

 

そのままブンミおじさんは目を閉じ、静かに息を引き取ります。

翌朝、

幽霊となった亡き妻の姿は無くなりました。

その後、ブンミおじさんの葬儀が執り行われます。

トンは出家し、真夜中、寺で寝床につくも、外の森の妙な気配で眠れず、ジェンのホテルへ。

そのまま夕飯を食べに行くため、トンはシャワーを浴び、着替え、いざ出発。

ふとジェンを見やると、もう一人の自分(トン)ともうひとりのジェンが。

 

そのままレストランへ行くトンとジェン。

一方で、もうひとりのジェンとトンは部屋でテレビを観ています。

 

感想

この森で色々な生命体として命を繰り返してきたブンミおじさん。そしてこれからも。

今生では、出稼ぎ労働者(多分、違法労働者)に職を与えたり、食べ物や飲み物を率先して他人に与えようとしたり、そして広い森のように広大な心を持ったブンミおじさんは『生』を司る森の神様の子供だったのではないかと思いました。

そして意志を持った森(神様)が神様の子供(ブンミおじさん)の最期を看取る、それがこの物語だったのだと解釈しました。

素晴らしい映画でした。