映画『ババドック 暗闇の魔物』の結末やあらすじ、感想・評価、作品の概要やキャスト等が掲載されているのでご注意ください。いつもありがとうございます。
【評価】
星 10/10 ★★★★★★★★★★(誰しもが魔物を飼っている)
Contents
簡単なあらすじ
息子が持ってきた絵本「ミスターババドック」。
その絵本を読んでしまったらババドックがやってくる。
概要
・原題:The Babadook
・製作国:オーストラリア
・製作年:2014
・主演:暗闇の魔物
オーストラリアのホラー映画。
本作に登場するババドックという魔物ですが、ネットフリックスが本作のジャンルを”LGBT”カテゴリーに誤って入れてしまったため、そのノリで一時、LGBTのシンボルとして使用されていたそうです。
ネタバレ
未亡人と息子
アメリアは、超反抗期の6歳の息子サミュエルを育てる未亡人。というのも息子サミュエルが生まれる日に、病院に向かう途中で(イケメンの)旦那は交通事故で死亡してしまったのです。アメリアは亡き夫をまだまだ忘れられていません。
息子サミュエルは、思ったことをすぐに口に出してしまったり、危険な手製の武器を学校に持って行ったりと問題児扱いされてしまい、結果的に放校になるほどのヤンチャ系の手のつけられない子供。
それでも、アメリアは頑張って息子サミュエルを愛し、育児も仕事も頑張っています。が、しかし、アメリアの精神状態はあまり良くないようです。
↑暗すぎる食卓
絵本を拾う
ある晩、息子サミュエルが絵本を持ってきます。
息子サミュエル「眠くなるまで、この絵本を読んで!」
アメリアは渡された絵本「ミスター・ババドック」を読み聞かせます。
「名前はババドック。バ・バ・バ、ドック、ドック、ドーーーーーーック!それが彼の来た合図。あ、ババドックのことは忘れることができません。ババドックを理解できれば良い友達に慣れるかも。」
内容と絵柄が恐ろしすぎて、アメリアはすぐに読むのを止めてしまいます。

それからというもの、息子サミュエルは様子が更におかしくなります。
息子サミュエル「ババドックが襲ってくる。ババドックは怖がらせてから姿をあらわすんだ。」

ただでさえ、問題児だった息子サミュエルですが、学校でも友達にババドックのことを話し、気味悪がられ、避けられ始めます。さらに、父親がいないことを馬鹿にされた息子サミュエルは、その子を突き飛ばし重傷を負わせてしまい、なんだかんだ助けてくれていたアメリアの妹からもソッポを向かれます。また、大事にしていた旦那との写真に落書きされたり、スープの中にガラス片がはいっていたりと、アメリアも息子サミュエルに対して限界が近づいているようです。
息子サミュエル「僕じゃない!ババドックの仕業だ」
ババドックがやってくる
アメリアにも不思議な現象が起こるようになります。
突然扉が開いたり、謎の影が見えたり。アメリアは息子サミュエルのいたずらだと思うも、息子サミュエルは「ババドックの仕業だ」と主張します。キレたアメリアはババドックの絵本を燃やすも、翌日、玄関の前にババドックの絵本が置かれていました。しかも、続きが追加されていました。
「否定すればするほど、ババドックは大きくなる」
絵本にはアメリアによく似たおばさんが、包丁で子供や犬を殺害しているページが追加されており、悪質なストーカーによる嫌がらせだと思い警察に駆け込むも証拠不十分で相手にしてもらえません。
また、壁から大量のゴキブリが発生する幻覚を見たり、疲れで会社を休んだり不眠症も悪化するなど追い詰められていきます。
そして遂に謎の声が聞こえます。
「ババ、ドック、ドック、ドーーーーーーーーック!」
恐る恐る天井を見上げると、暗闇の魔物ババドックがやってきました。そして、その黒い魔物はアメリアの口から体内へ入ってゆきます。
取り憑かれた母アメリア
その後、
少しでも睡眠を取りたいアメリアに対して、お腹が空いたとカンシャクを起こすサミュエルに対して爆発してしまいます。
アメリア「うっセーな、少しは寝かせろよ。お腹が空いたならクソでも食ってろ。」
その後、正気を取り戻したアメリアは息子サミュエルに謝ります。

しかし、ついにババドックに完全に取り憑かれたアメリア。
アメリア「本当にお前はうるさいガキ。お前なんか生まれなければよかった。お前さえいなければ旦那は生きていたんだ。お前が代わりに死ねばよかったんだ。」
アメリアは絵本に書いてあった通り、犬を殺し、息子サミュエルを殺しにかかりますが、息子のおかげで、間一髪で正気に戻ります。
アメリアから分離したババドックに向かって、アメリアは叫びます。
アメリア「この家から出てけ、不法侵入野郎!そうでないとお前を殺すわよ!!」
アメリアがババドックにそう叫ぶと、ババドックはそそくさと地下室へと逃げ込みます。
一応、平和が訪れました。
その後、ババドックを地下室で飼育するアメリア(!!)。
アメリアはババドックと共生することを決めたのでした。
解説
ババドックとは一体なんだったのか
ババドックはアメリアの負の感情が生み出した魔物だと思いました。息子サミュエルが生まれる日に、病院へ向かう途中で事故死してしまった超絶イケメンで優しい旦那。旦那との間に生まれた宝物であるはずの息子も、アメリアを悩ませる存在。学校では発達障害扱いされ、いとこを突き落とし鼻を折ったり、家でもかまってちゃん状態で頻繁に癇癪を起こし、マスターベーションの最中でさえ、サミュエルに邪魔をされてしまいます。なんだかんだ助けてくれた妹にも拒絶され、いよいよ孤立してしまい家に引きこもり状態になるアメリアと息子サミュエル。夜にはババドックの恐怖で眠れず、昼間はサミュエルに邪魔され眠れない日々が続き、アメリアさん、本当にやばいです。
そんな極限状態の中、アメリアは元絵本作家という経歴を活かし、無意識化で「ババドック」という絵本を制作したのだと思います。ババドックを執筆中のアメリアは息子サミュエルを殺したいほど憎い、ドス黒い感情で支配され、その気持ちを代弁するかのような絵本の内容。普段は、ギリギリですが正気を保っている状態では必死で息子サミュエルを愛そうと努力をしますが、限界になったとき、アメリアの前には、自身の闇が作り出したババドックが現れるのでした。まさに引き寄せの法則。
最終的に、アメリアの精神状態を保つために、アメリアは自分のドス黒い感情を認め、ババドックを受け入れます。ババドックという魔物はアメリアにとっては必要な存在であることを認めるのです。つまり、息子サミュエルを恨む気持ちも消えていないということです。いつか、アメリアが状況を受け入れ、完全に許せたとき、ババドックは消えてなくなっていくのだと思います。誰にも人には言えないような悩みやドス黒い感情はあり、その発散方法も人によっては様々。旅行に行ったり友達に話したり。アメリアにとってその方法はババドックだったということでした。
「否定すればするほど、ババドックは大きくなる」
ババドックを否定せずに、受け入れること。それがアメリアには必要だったのでしょう。
↑こっちもめちゃくちゃ怖い。